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洗濯物の彫刻(2022)

「衣服は干されているあいだのみ『洗濯物』という『状態』となる」ことから発想し、展示されているあいだのみ作品として成立する彫刻を考え始めました。

この布でできた彫刻には芯材のような構造は入っておらず、衣服の形状をした布とハンガーにあたる部分の紐状の同素材の布でできており、周辺の壁からテグスで引っ張ることによって洗濯物の形状にしています。

彫刻はその内側に構造を持っていたり、その彫刻を構成する素材自体が堅固なものであることで基本的には立っています。この「自立」という特徴を逆さにし、「自立しない」彫刻、彫刻そのものでは彫刻として立つことができない、周囲の壁などとつなげてようやく立ちあがらせることができる彫刻というものを作れないか、ということがこの作品の出発点となっています。

「わたしは民家の庭やベランダなどで洗濯物が干されている様子を見るのが好きである。干された服や下着は人間の抜け殻のように見え、風にはためく様子は旗のようでもある。

 

着られている間は着ている主の一番近くでそのプライベートを守り、どこかその主の一部となっている衣服は、脱がれて洗われて干されると、途端にその私性を失いただ布のかたまり、「洗濯物」というものに戻っていく。衣服は、着られている状態、干されている状態、畳まれて仕舞われている状態、さまざまな状況に置かれる中で、干されている間だけ「洗濯物」として存在する。

 

この「洗濯物」のように、「彫刻」を存在させることは出来るだろうか。

干されて(設置されて)いる間だけ、「彫刻」として存在するもの。展示が終わると畳まれて、また次に展示される時が来るまで布の状態で仕舞われるもの。

「彫刻」「作品」というのは「もの」そのもののことではなく、「もの」が置かれるさまざまな状態があるうちのただの一つに過ぎないように思う。」(2022年11月)